自律神経失調症・気分障害(うつ病)・不安障害・等々、心と体の関係について
心と身体は密接に関係している
自律神経失調症・うつ病等の気分障害などは、「心因性」の病気と呼ばれています。「心因性」とは「ストレス」やその他の「心の状態」が原因で結果として心身に不調を及ぼしている状態を指します。
我々の心と体の間に密接な関係があるということは、特に専門的に学んだことの無い方でも何となく理解できることでしょう、仕事や人間関係で悩んでいる時にお腹や胃の調子が悪くなったり、人前での発表で緊張して心臓がドキドキしたり、恐ろしい目に会った時に体が震えたり…等々、心の状態によって体に様々な変調が起こることは誰しも経験のあることだと思います。
この心と体の関係は「心身相関」と呼ばれ、心理学・心身医学・の分野で様々な研究が行われてきました。この心と体を結ぶ経路としては「自律神経系」・「内分泌系」・「免疫系」などがあり、それぞれの働きをここで深く述べる事は控えますが、これらが複雑に関わり合って「心→体」「体→心」へと影響を及ぼし合っています。
ストレスの慢性化が心の病気を引き起こす
心の状態が体に影響を及ぼす事例として一番理解しやすいのは「自律神経系」でしょう。「自律神経系」には「交感神経」(体を活動・緊張・攻撃・などに向かわせる神経)と「副交感神経」(体をリラックスの方向へ向かわせる神経)があり、前述の「緊張場面で動悸がする」「恐怖場面で体が震える」等は、この内の「交感神経」が優位な状態で起こります。我々の心が緊張や恐怖などのストレス感情を感じると、交感神経が優位となりこのような体の変調となって現れるのです。
この自律神経の働きによって起こる体の変化は特に病気ではなく、誰にでもごく当たり前に起こることです、これらは緊張場面の終了・恐怖場面からの回避・がなされた後には自律神経のバランスが平常に戻り動悸や震えは治まります。自律神経失調症などの「心因性」の病気「心の病気」はこの心身の緊張状態が、「ストレスの慢性化」によって実際の状況(緊張場面・恐怖場面・等)に関係なく起こっている状態と言えるでしょう。
ストレスは自分の心が生み出すもの
「ストレスの慢性化」には様々な要因が関係しています。「ノルマや残業など過酷な労働環境」「責任の重い立場でのプレッシャー」「円滑でない人間関係」等々…ストレスを生じやすい環境では確かに「ストレスの慢性化」は起こりやすいのも事実です。しかしこれらを客観的に見てみると、同じ環境で生活している人であってもその環境をどの様に受け止め、どの様に行動するかは一人一人違います。
ノルマが達成できずに落ち込んだり上司の叱責に怯えたりする人もいれば、上司の前では平謝りしながら裏では「達成出来る時もあるし出来ない時もある、しょうがないじゃん!」と舌を出している人もいます。責任ある立場になり「全ての業務を自分が把握していなければ部下に指示を出せない!」と考える人もいれば、「トヨタの社長だって車の組み立ては出来ないんだから、細かい部分は専門に任せて自分の方針を組織にうまく浸透させることだけに集中しよう」と考える人もいます。
ストレスと性格の関係
この様に「環境や出来事に対してどう感じてどう行動するか」=「性格(心の反応)」の違いによって「ストレスの慢性化」が起こりやすいタイプとそうでないタイプがあるのです。
「性格」には、良い悪いという基準はありません!どんな方にも良い面もあれば至らない面もあります、しかしその中にストレスを感じてしまいやすい性格傾向がある場合には、「ストレスの慢性化」が起こりやすく自律神経失調症などの「心の病気」を発症してしまう可能性が高くなります。
国分康孝先生は著書の中で「カウンセリングとは言語的非言語的コミュニケーションを通して行動の変容を試みる人間関係である」(国分1979)とされています。さらに「行動の変容とは、反応に多様性が出てくることである」とも言われています。様々な環境や出来事に対して一つに偏った心の反応だけなく、多様性のある感じ方(ゆとりのある性格)を身につける事がカウンセリングを含めた心理療法を受ける本来の目的であり、結果として「ストレスの慢性化」は解消され「心の病気」が改善されるのです。